about 元櫛問屋 中村邸
元櫛問屋中村邸は、旧街道(中山道)在りし江戸末期の奈良井宿にて営まれていた櫛の問屋さんです。
旧・奈良井宿は国(文化庁)の「重要伝統的建造物群保存地区」(重伝建)に選定されていますが、「中村邸」はそのきっかけとなった民家でもあって(※)、同じく旧中山道沿いにある上問屋資料館共々、国指定重要文化財に指定されています。
◾️関連リンク
Guide
- 【19年青春18きっぷの旅/2026リマスター】旧中山道の宿場町、奈良井宿(JR中央本線、奈良井駅傍)
- 【19年青春18きっぷの旅/2026リマスター】旧中山道・奈良井宿 -上問屋資料館(国指定重要文化財)-
Info
- 中村邸公式サイト(塩尻市、奈良井宿観光協会)(※)
- 文化庁公式データベース・旧中村家住宅 “主屋“、”土蔵“
- 文化庁公式サイト “伝統的建造物群保存地区“、”塩尻市奈良井・木曾平沢(長野県)“
中村邸へ
邸内一階

中村邸入口は、写真正面やや左あたりに位置する「中村屋 御櫛所 利兵衛」と書いてある白い扉で、旧中山道に面しています。

邸内に入ると、部屋と部屋の間を仕切るふすまの上に置かれた神棚、および二階部分に造られた茶室が目を惹きますが、

古民家一流とも言える風情のある空間では、神棚の向かいに囲炉裏とかまども用意されています。
共に、昭和の頃まで実用に供していたようです。

中山道から見えたイメージ以上に、邸内は奥へ上へと広がっています。
邸内二階への階段

二階に上がっていく階段は、横から見ると箪笥状の収納になっています。
今でいうところのロフトベッドに近い発想をベースにしたと思しき「家具兼階段」ですが、例えば江戸時代(18世紀)から続くという岩手の伝統工芸・岩谷堂箪笥では、今でも階段箪笥が販売されています。
ロフトベッドのルーツだと言われる二段ベッドの起源は紀元前、普及については18世紀あたりといわれているようですが、「階段型箪笥」についてはどうなのでしょうか。

この階段で繋がれた一階と二階は、

二階側から、間に階段をふさぐ形の天井を出すことが出来ます。
階段最上部の手前側から板を引っ張り出すと階段が隠れて床となり、二階は隠し部屋状態になるんですね。
「二階への道」をふさいだ場合、一階側から見ると階段が天井に向かって延びていることになるのですが、この構造は、一階にあった囲炉裏の火から出た暖気を一階にとどめておくために必要とされたようです。

中村邸の一階(囲炉裏のある部屋)は天井も高く開放感があるため、熱が逃げてしまいやすい構造となっているのですが、夏涼しく、冬は寒いという高地の気候を前提とすると、この「二階への隠し天井」が大きな意味を持ってきます。
◾️関連リンク
Info
- 岩屋堂タンス製作所 “岩屋堂階段箪笥“
- インテリア家具のカルチェラタン “やはり気になる二段ベッドの歴史・起源“
邸内二階(茶室)

正面から撮った写真だと少々わかりづらいのですが、二階の床の間の上にはめこまれた小さなふすまは、上部が前に、下部が奥にずれている形で、実は少し傾いています。
あえてそう作られているということのようで、近くで見てみるとはっきり角度が付いているのが分かりますが、この角度には「ふすまの絵がお客さんによく見えるように」という、粋な心遣いが現れています。

さらにもう一点。このふすまには、季節によってお客さんの目を違った楽しませ方をするためにということで、裏側にも絵が描いてあります。絵、さらには家具類が本当に好きな人の発想であり、センスですね。

格子窓の階下は旧中山道です。ここはかつて茶室として使われていた部屋だったようですが、昔の日本人が「お茶」に向けていた意識が時を超えて伝わって来るような、なんとも繊細な空間づくりが伝わりますね。
櫛の展示

元櫛問屋だった中村邸では、かつて扱っていた櫛が展示された一画が設けられています。

「心得帳」(櫛を利用するにあたっての指南書のようなもの)の他、髪を整えるために使った簪や笄、

さらには多くの櫛など。

いずれも、かつての奈良井宿で作られたものが展示されています。

